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2014年8月6日水曜日

2012年バレーボールミーティング(静岡県三島)の資料から②

三島の2012 バレーボール ミーティングでの資料の続きです。一部、割愛させてもらっている部分がありますが、ご了承ください。ライブでの講義を聞いてなくても、たくさん勉強になるところがありますね。














ファースト・テンポの踏み切り動作に潜む〝ある特徴〟

✓ セット・アップのタイミングを目安に行う
  踏み切り動作(=狭義の【ファースト・テンポ】)は、
  「セッターに合わせてアタッカーが助走する」という、
   セッター起点の〝コンビ・バレー〟のコンセプトでは、
   達成することができません

✓ アタッカーが先に助走し、
   それにセッターが合わせるという〝コンビ・バレー〟以前の
   コンセプトに立ち返らない限り、
   リード・ブロックに効果を発揮する踏み切り動作は
   達成できないのです。

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『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』 で提示した
【ファースト・テンポ】【セカンド・テンポ】の定義

✓ 【ファースト・テンポ】
    アタッカーが先に助走動作を行い、
    それにセット軌道を合わせる
ことで打たせるアタック          → 1960年代の〝個人技勝負〟のコンセプト)

✓ 【セカンド・テンポ】
    セット軌道に合わせて
    アタッカーが助走することで繰り出すアタック
        ( → 1970年代のセッター起点の〝コンビ・バレー〟のコンセプト)

相手のブロック戦術にどう対抗するのか?
    に関する両者のコンセプトの違いを明記しました


『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』において
【テンポ】の定義を大幅に見直した理由

✓ 初版の『バレーペディア』(2010/05) では、
  【テンポ】 を
  「セット・アップからボール・ヒットまでの時間の長さ」
   と定義したため、各【テンポ】の違いが
  「時間の長さ」の違いでしかない、かのような誤解を招きました。

✓ セット・アップ後のプレー動作に要する経過時間さえ短縮できれば
  【ファースト・テンポ】が繰り出せる、という誤解が蔓延し、
   アタッカーの個人技で相手のブロッカーと勝負するという、
  【ファースト・テンポ】が持つ本来のコンセプトが忘れ去られる
   結果に陥ったのです。


〝1秒の壁〟〝1.1秒〟〝0.8秒〟

✓ セッター起点の〝コンビ・バレー〟の意識が根強い
   日本のバレー界では、
   セッターのトスにアタッカーが合わせる
  【セカンド・テンポ】のコンセプトから抜け出せず、
  「セッターが上げる〝速いトス〟をアタッカーが打つ」という、
   いわゆる〝はやい攻撃〟のコンセプトが生まれました。

✓ 〝1秒の壁〟〝1.1秒〟〝0.8秒〟
   という言葉に象徴されるように、
  セット・アップから何秒で打つという行為自体が〝目的化〟し、
   アタックの目的が何だったのか? が忘れ去られる事態に陥りました。

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〝はやい攻撃〟のコンセプトが招いた〝悲劇〟(その1)

✓ 助走動作を削れば、アタッカーは
   全力でジャンプすることができなくなります。
   そうやって自身の打点高を犠牲にしても、
   リード・ブロックに効果的な踏み切り動作を達成できないため、
  「得点を奪う」というアタックの目的そのものを
   叶えることができません。

✓ そのため、助走動作を削っても
   自身の持ち味を最大限近く発揮できる〝特殊な能力〟
   を持った選手
でなければ、   リード・ブロックに効果を発揮するスパイクが
   打てない状況に陥っています。




〝はやい攻撃〟のコンセプトが招いた〝悲劇〟(その2)

✓ 日本の長身選手は
  俊敏な動作を苦手とする選手が多く、
   〝はやい攻撃〟のコンセプトでは、
   助走動作に要する時間をうまく短縮できません。
   そのため、日本のバレー界では
  「長身選手は〝はやい攻撃〟が苦手である」という
   〝神話〟が生まれ、
   そのせいで過去に何人もの有望な長身選手が、
   活躍の機会を失いました。

✓ 真実は、助走動作に時間を要するなら
  それに見合うだけ助走動作を開始するタイミングを
   早くすればいい
のであって、   決して助走動作を削る必要はないのです。


〝はやさ〟とは「誰にとっての〝はやさ〟」なのか?

✓ リード・ブロックに効果的なスパイクとは、
  ブロッカーが〝速い〟と感じる攻撃のことであって、
  本当に必要とされる〝はやさ〟は、
  アタッカーにとっての〝はやさ〟ではなく、
  相手のブロッカーにとっての〝はやさ〟なのです。

✓ 相手のブロッカーにとっての〝はやさ〟
  を達成するには、
  ブロッカーがセット・アップを確認してから
  でないと動き出せないことを逆手にとって、
  セット・アップ前に十分に時間をかけて
  助走動作を行う
方が理にかなっています。
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アタッカーに要求される条件とは?

✓ いわゆる〝ブロックが完成する前に打つ〟とは
   ブロッカーが届かない高い位置からボールをヒットする状態
   を意味しており、
   アタッカーには、セット・アップよりも前に
   十分な助走距離を確保して全力でジャンプし、
   自身の最高到達点でボールをヒットすることが要求されます。

✓ リード・ブロックに効果を発揮するファースト・テンポを
   繰り出すためにアタッカーに要求されるのは、
   特殊な能力を持った選手しかできないプレーではなく、
   しっかり助走して全力でスパイクを打つという、
   誰もが達成可能な〝あたりまえ〟のプレーなのです。


ファースト・テンポと〝はやい攻撃〟は
全く別のコンセプトのアタック戦術である
という真実を、実感頂けたでしょうか?

(③へつづく)


(2012年)

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