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2020年5月3日日曜日

ポーランド滞在記雑感

勢いで、バレーボールを観るために数日間ポーランドに飛び込んでみました。

 私の課題、テーマは、「育成」やその「システム」において、日本にはないものがポーランドにあるかもしれないということ。そしてもう一つは、ともすると、日本のバレーボールの低迷の中にあって、何でもかんでも日本はダメ、海外が素晴らしいという偏った見方ではない、日本のバレーボール界がもつ、潜在的な可能性や良さを見出せないかというものでした。


日本の良さ・・・
 やはり、施設、環境面は圧倒的に恵まれた環境にあると思います。学校をベースに、どの体育館にもバレーボールコートは作れますしボールもあります。学校が中心に少年団や部活動としてチームが存在し、しかも施設使用料や月謝みたいなものはほぼなし。コーチングスタッフも無償でやっている場合が多いです。競技人口も圧倒的に日本の方が多いですし、子供からママさん、年配の方まで、いろんな形のバレーボールスタイルで練習やゲームをしている環境が日本にはあります。またアリーナの設備も圧倒的に日本の方が整っているのは間違いないでしょう。

 日本で提供されるコーチング(指導)は、個々の指導者のバレーボールに注がれる熱意からくる、研究熱心さによるものが大きいです。さほどコーチングを学んだりアップデートできる公の機会が多くない中で、それぞれが自分の経験や人脈を駆使した研究によって、無償に近い中で提供されています。ですから受益者である選手や保護者にとっては、比較低いコストでコーチングを受けることができると思います。


ポーランドを訪問してみて・・・

 たびたび述べさせてもらっているとおり、1970年までは日本とポーランドの男子バレーはともに肩を並べて世界のトップを争いながらも、80年代~2000年代初頭はなかなか世界の頂点には立てていなかった中、ポーランドは近年、世界のトップに返り咲いています。そして日本は低迷を続けてきました。
 ですから、ポーランド国内でのバレーボールに何か日本にはないものがあるのではないか?というのが個人的な関心と仮説的なテーマだったわけです。

・国民的人気スポーツの確立とプロモート

・プロリーグの活性化と改善

・代表強化につなげるための育成

・トップから系統的に構築するアンダーカテゴリの指導システム

・コーチ(指導者)の資格、評価

・競技経験者だけじゃなく、教育、メディカル、運動学・・・多角的な分野との連携

・連盟(協会)の弛まない向上心と改善マインド

・青少年年代への配慮とモチベートの工夫

・他国の情報収集、他国指導者間のセミナーなどでの情報交流

 やはり、長期的な視点に立った、スケールの大きいビジョンと構想、そしてそれを実現すべく大きなくくりで人々を結び付け巻き込んでいく・・・そういったアクションを組織が率先して行う。組織は、代表監督やリーグ指導者の意見を取り入れながら、より良いものを追究していく。こういったものが原動力になっていることを肌で感じることができました。

 ポーランドにおける今やっている育成プログラムやシステムが動き出したのが2000年代に入ってからとのこと。偶然のようで、やはり代表強化のタイミングにも重なるような気もするのです。

 日本は、バレーボールができる空間もあり、バレーボールをやっているプレーヤーも多い。そして選手たちを導こうとするコーチング(指導)をやっている人も多い。

 しかし、残念なことに(批判的になってしまうのが本意ではないが)、個々の熱意や研究心、モチベーションは高いが、そのベクトルや目指すゴールがあまりにもバラバラであり、日本のバレーボールというものが一枚岩になっていないのは明らかな気がします。

 指導内容も体系化されたものがあるわけでもなく、全国でシェアされているシステムがあるわけでもない。個々の指導者、それぞれの学校やチーム、それぞれの都道府県・・・思惑も指導理論も、目指すバリューやビジョンもばらばら。その中で、得てして対立や摩擦を生むことも多い。各カテゴリの間が分断されており、それぞれのカテゴリが独自の進化?迷走を続けている状況が続いているように思えるのです。

 競技(愛好者)人口が多い割には、代表チームやリーグへの関心も高いわけではなく、そこに対する組織のビジョンや熱意もいまいち見えてきにくい。

 こうやって記述していくと、あれもないこれもないという無い物ねだりだったり、ああしろこうしろという他力本願的な中身になってしまうのですが、でも個々の環境でがんばるだけでは、海外には追いつけない状況になっているんじゃないかと思うわけです。

 日本には、他国に比べても、潜在的なアドバンテージや資源や条件がまだまだ残されていると思うわけです。足りないのは、それらをどのように生かし結び付け、コーディネートし組織化するか。ミクロな部分で個別にバラバラ取り組むのではなく、十分研究され練られた構想を同時多発的に日本全国で展開できるか。
 今回のポーランド訪問にあたり、何人かの海外でのプレーでがんばる選手の方とも連絡を取りました。我々が思う以上に、海外でプレーをがんばる、がんばろうとしている日本人が多いのです。そして近年では、日本国内のVリーグにも、海外選手やコーチたちが多くやってきています。
 そういったものを良き資源とし、生かし、積極的に吸収しそれを日本全国に拡散させていく必要性が、組織や指導者、愛好家やファンの中から生まれてくることを期待して止みません。

(2020年)