第73回全日本バレーボール高等学校選手権大会
今年の女子は、どこが勝ってもおかしくないような、どの試合も熱戦が繰り広げられました。決勝は、就実(岡山)と大阪国際滝井の対戦となりました。
国際滝井のOH中本選手を中心にダイナミックにスパイクを打ち込んで応戦していました。
高校女子バレーは従来、セッターに正確な返球をし、いわゆる「スピード重視の展開」を作るべく、ニアネット傾向から速く低めのセット(トス)による、「はやい攻撃バレー」を志向する戦い方が目立っていたように思います。
ところが近年は、例えば東京の下北沢成徳高校が、選手のフィジカルをしっかり鍛え、戦術以前の個人のパフォーマンスや強度、しっかり跳んでしっかり打つ、しっかり上げる・・・というチームが勝つなど、少し変化も見られてきました。
ともすると、エースバレーとか単調なオープンバレーという見方をする人もいるでしょうが、私は個人的には、高校生カテゴリは、競技における強化のゴールではなく育成途上であってほしいしあるべきだと思うので、今年の春高バレーの上位チームのバレーは、個人のパフォーマンスを犠牲にした戦術ありきの展開よりも、個人のパフォーマンスをしっかり発揮しようとする場面が多いゲームに、あるべき姿を見たような気がしています。右利きのOHがレフトからスパイクを打つとき、特にオープンやハイセットなどでは、かつてはストレート方向に打ったりブロックアウトでしのぐことが多かったのに対し、しっかりクロス方向に打ちぬく選手も増えたなと思います。
果たして、今年の結果は、コロナの影響による練習時間の確保やトレーニング不足などのために、本当は複雑なコンビネーションを要するような理想のバレーボールが間に合わなかった結果だったのでしょうか?完成するはずのゲームモデルが仕上がらなかったのでしょうか?
正直、一観戦者としては判断できかねますが、私はそう考えません。
むしろ、女子決勝の就実高校、国際滝井高校がみせたバレーボールは、まだまだ成長途中にある高校生プレーヤーたちに、限られた期間の中で限定的な戦術を用いたり、それによる限定的な技術だけを要求したりせず、しっかり守ってしっかり打つ、より高くより強くなどのような、当たり前・基本を追求したのではないかと考えました。
高校女子でもバックアタックやジャンプサーブも見られるようになってきました。概して女子バレーは、男子バレーの戦術や技術の後追い的に発展していくわけですが、それにしても高校バレーでは、女子のアップデートの余地はまだまだ大きいと思っています。
例えば、バックアタックや、センター付近からの攻撃に対してブロックが1枚になるという状況はなかなか女子バレーでは解消されません。バックアタック自体も特定の選手しか繰り出しておらずその発生率もまだまだ低いです。オーバーハンドによるセット(トス)はキャッチ気味なハンドリングに依存しており、ハイセット場面はアンダーハンドになることも多いです。OP(オポジット)の選手の育成も遅れていると感じています。
(2021年)
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