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2020年3月22日日曜日

ポーランドへ行ってみた③

2020年2月のポーランド訪問記③

 前日は、首都ワルシャワで活動する、U18のクラブチーム様子を見学し、いわゆるアンダーカテゴリー、育成年代の練習やコーチングの一端を観ることができました。

 ポーランドのバレーボールに関して、予てから私が関心を寄せていたことは、国際的な中での強化の成功と、日本との対比についてです。
ポーランドと日本は、男子バレーにおいて、1970年代に世界のトップを走っていました。ところが1980年代以降、旧ソ連の他に、アメリカやキューバが躍進し、その後イタリアに続いてオランダやユーゴスラビアなどのヨーロッパ勢が台頭します。2000年代はみなさんご存知の通り、ブラジル代表によって現代のバレーボールシステムが確立され世界を牽引してきました。
 ポーランド男子は、そのような情勢の中で2010年前後から世界のトップに返り咲いてきました。
 残念ながらその間、1970年代にはポーランドとともに世界の頂点を争い頂点に立った日本は現在もなお世界に溝を開けられています。ここにはどのような違いがあるのか?そして私の仮説は、特にアンダーカテゴリ、育成年代といわれるような青少年への普及や育成のシステムに、ポーランドと日本に違いあることをこの目で見たかったわけです。

(スパワにあるオリンピックセンターのバレーコート)

ポーランドバレーボールのトレーニングと開発のシステムは、その基礎・土台ともなっているる「スクールバレーボールセンター(SOS)プログラム」と、ポーランドバレーボール連盟が運営するバレーボール専門の「スポーツマスタリースクール」によって支えられているようです。

「SOSプログラム」におけるトレーニングは、地元のクラブで若者をトレーニングするコーチによって運営される、小学校のスポーツクラスに基づいているようです。

 
(「SOSプログラム」に関する資料)

「スポーツマスタリースクール」というのは、いわゆる高校生にあたる年代の、国内からセレクションされた選手が集まり、寮生活をともなった学校生活をしてバレーボールのより専門的な指導を受けるものです。男子はワルシャワの南西にあるスパワで、女子はクラクフの南西にあるシュチルクにある、ナショナルオリンピックセンターで専門スタッフの指導を受けています。そして彼らは、ポーランドリーグの2部に参戦をしています。その中からプロクラブやナショナルチームへの道にもつながります。



 ここに来ると、ポーランドの男子バレーボールの歴史が凝縮されています。多くの選手たちがこの地でトレーニングをしコーチングを受けてきているのがわかります。ここからも、長期的な展望にたって、計画的に選手を育成し、組織的なコーチングをしていることがうかがえます。


 この日の練習は、リーグ戦前日の調整のためのものだったようです。
  ・体力トレーニングをともなったウォーミングアップ
  ・シングルハンド限定のミニゲーム
  ・2対2のフロントコートでのミニゲーム
  ・6対6による、レセプションからのゲーム練習


 ポーランド国内からセレクションされた生徒たちだけあって、メンバーはすべて長身選手。フィジカルもしっかりトレーニングを受けていることがうかがえます。
 バレーボールスキルは、日本の高校生と比較してそれほど驚くようなスキルの高さが顕著というわけではないものの、全員がしっかり基本スキルを身につけています。日本でしばしば見受けられる、長身なのに動きが散漫で守備ができないなどといったことはあまりないようです。


 注目したことが、ゲームにおけるプレースタイルみたいなものに、系統性を感じたということです。前日見てきたクラブチームでやっていたこととも共通性があり、その後見てきたプロチームのプレーにもつながっているようです。これらは、単なるトレンドや指導者の思い付きでやっていることではない、系統的な取組を感じます。実際前日のクラブチームでのプレーよりも、スパワのセレクションチームの方が完成度も高さパワーにも磨きがかかっていました。
・シー アンド リアクト をベースにした組織的なブロック
・センターからのバックアタックが組み込まれいる
・センターからのバックアタックは、アプローチや打つ位置にバリエーションがある
・いわゆるBクイック的なセッターから距離のあるファーストテンポが軸
・オポジットのライトからのバックアタック

このあたりは、意図的なコーチングがされているように思いました。

 練習の最後に、ヘッドコーチから質問をたずねられ、恥ずかしいことに質問に困ってしまい、慌てて「選手の思考力」についてたずねてみました。そうすると、「何を今さら当然だろ!」みたいな返答されてしまいました。
 ゲームにおいて、選手が主体的に自ら考えをもってプレーをすることは当然のことであり、それをここでは教えることではない、というような返答でした。
 むしろ、高度な展開とやろうとする戦術を各々が理解し、その達成のために、場面で瞬時に最適な判断とパフォーマンスの発揮を行うこと、そのための果敢なチャレンジやトライから逃げないこと・・・そういったあたりへの要求があったように思います。
 コーチは、静かに見守ることが多い中、消極的なプレーや原則に反するプレーには即座に強い言葉がけをしていることもあります。それは感情的に怒るといったものではなく、しかしそれでもかなり緊迫感のある場面もあったりしました。
 こういったあたりも、日本での話題や議論がまだまだ未成熟なところもあるように思います。


 お邪魔したスパワのオリンピックセンターは、ワルシャワから車(高速道路)で1時間ちょっとの小さな町の中にあり、スパワの帰りからワルシャワに入った郊外にある、ポーランド連盟のオフィスに幸運なことにお邪魔することができました。


 今回お世話になった連盟のスタッフの方とお話していると、とにかく「ポーランドはまだまだ」、「ポーランドはこのままではいけない」といった言葉がよく聞かれ、現状に満足してはいけないという気概を感じます。
 ポーランドリーグの活性化や国際大会の開催などを通して、ポーランドは成長を遂げつつ、ここ10年間は育成プログラムの整備にも着手しました。2000年代当初活躍した選手たちの多くが指導者となり活躍しているようです。また、データーソフトの自国開発にも挑戦しています。また、海外との交流も大事にしており、そこでの情報交換やノウハウの交流も成功の一因につながっているようです。
 特にヨーロッパでは、各国・各地で、コーチたちのクリニックやレクチャーなどが多く開かれているようで、それらを通した交流や切磋琢磨も成長の大きな要因になっているようです。

 ポーランド連盟のオフィスに入って驚いた光景に出くわしました。オフィス内のドアに何やら、漢字の張り紙があったのです。そこには「改善」と書かれていました。


 これは、なんと、ポーランド代表監督のヘイネンが、ポーランドでものすごく強調している言葉なのだそうです。この「改善」という言葉は、世界の中で自動車生産のリードする日本の企業理念、組織理念の考え方が、世界中に広まっているなかで、ヘイネンも大事にしている言葉なのだそうです。
 最後には、ポーランドバレーボールの会長室にも入れてもらい、会長と面会もできました。会長室には、東京オリンピック出場権を得た試合後の際に使われた、ダルマが飾られていました。


 日本のバレーボールが、ポーランドをはじめ、他国から謙虚に学ぶべきことはたくさんありそうです。(連盟のHPでしょうかいしてもらえました)



(2020年)

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