三島の2012 バレーボール ミーティングでの資料の続きです。一部、割愛させてもらっている部分がありますが、ご了承ください。ライブでの講義を聞いてなくても、たくさん勉強になるところがありますね。
ファースト・テンポの踏み切り動作に潜む〝ある特徴〟
✓ セット・アップのタイミングを目安に行う
踏み切り動作(=狭義の【ファースト・テンポ】)は、
「セッターに合わせてアタッカーが助走する」という、
セッター起点の〝コンビ・バレー〟のコンセプトでは、
達成することができません
。
✓ アタッカーが先に助走し、
それにセッターが合わせるという〝コンビ・バレー〟以前の
コンセプトに立ち返らない限り、
リード・ブロックに効果を発揮する踏み切り動作は
達成できないのです。
『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』 で提示した
【ファースト・テンポ】【セカンド・テンポ】の定義
✓ 【ファースト・テンポ】
アタッカーが先に助走動作を行い、
それにセット軌道を合わせる
ことで打たせるアタック → 1960年代の〝個人技勝負〟のコンセプト)
✓ 【セカンド・テンポ】
セット軌道に合わせて
アタッカーが助走することで繰り出すアタック
( → 1970年代のセッター起点の〝コンビ・バレー〟のコンセプト)
→ 相手のブロック戦術にどう対抗するのか?
に関する両者のコンセプトの違いを明記しました
『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』において
【テンポ】の定義を大幅に見直した理由
✓ 初版の『バレーペディア』(2010/05) では、
【テンポ】 を
「セット・アップからボール・ヒットまでの時間の長さ」
と定義したため、各【テンポ】の違いが
「時間の長さ」の違いでしかない、かのような誤解を招きました。
✓ セット・アップ後のプレー動作に要する経過時間さえ短縮できれば
【ファースト・テンポ】が繰り出せる、という誤解が蔓延し、
アタッカーの個人技で相手のブロッカーと勝負するという、
【ファースト・テンポ】が持つ本来のコンセプトが忘れ去られる
結果に陥ったのです。
〝1秒の壁〟〝1.1秒〟〝0.8秒〟
✓ セッター起点の〝コンビ・バレー〟の意識が根強い
日本のバレー界では、
セッターのトスにアタッカーが合わせる
【セカンド・テンポ】のコンセプトから抜け出せず、
「セッターが上げる〝速いトス〟をアタッカーが打つ」という、
いわゆる〝はやい攻撃〟のコンセプトが生まれました。
✓ 〝1秒の壁〟〝1.1秒〟〝0.8秒〟
という言葉に象徴されるように、
セット・アップから何秒で打つという行為自体が〝目的化〟し、
アタックの目的が何だったのか? が忘れ去られる事態に陥りました。
〝はやい攻撃〟のコンセプトが招いた〝悲劇〟(その1)
✓ 助走動作を削れば、アタッカーは
全力でジャンプすることができなくなります。
そうやって自身の打点高を犠牲にしても、
リード・ブロックに効果的な踏み切り動作を達成できないため、
「得点を奪う」というアタックの目的そのものを
叶えることができません。
✓ そのため、助走動作を削っても
自身の持ち味を最大限近く発揮できる〝特殊な能力〟
を持った選手
でなければ、 リード・ブロックに効果を発揮するスパイクが
打てない状況に陥っています。
〝はやい攻撃〟のコンセプトが招いた〝悲劇〟(その2)
✓ 日本の長身選手は
俊敏な動作を苦手とする選手が多く、
〝はやい攻撃〟のコンセプトでは、
助走動作に要する時間をうまく短縮できません。
そのため、日本のバレー界では
「長身選手は〝はやい攻撃〟が苦手である」という
〝神話〟が生まれ、
そのせいで過去に何人もの有望な長身選手が、
活躍の機会を失いました。
✓ 真実は、助走動作に時間を要するなら
それに見合うだけ助走動作を開始するタイミングを
早くすればいい
のであって、 決して助走動作を削る必要はないのです。
〝はやさ〟とは「誰にとっての〝はやさ〟」なのか?
✓ リード・ブロックに効果的なスパイクとは、
ブロッカーが〝速い〟と感じる攻撃のことであって、
本当に必要とされる〝はやさ〟は、
アタッカーにとっての〝はやさ〟ではなく、
相手のブロッカーにとっての〝はやさ〟なのです。
✓ 相手のブロッカーにとっての〝はやさ〟
を達成するには、
ブロッカーがセット・アップを確認してから
でないと動き出せないことを逆手にとって、
セット・アップ前に十分に時間をかけて
助走動作を行う
方が理にかなっています。
アタッカーに要求される条件とは?
✓ いわゆる〝ブロックが完成する前に打つ〟とは
ブロッカーが届かない高い位置からボールをヒットする状態
を意味しており、
アタッカーには、セット・アップよりも前に
十分な助走距離を確保して全力でジャンプし、
自身の最高到達点でボールをヒットすることが要求されます。
✓ リード・ブロックに効果を発揮するファースト・テンポを
繰り出すためにアタッカーに要求されるのは、
特殊な能力を持った選手しかできないプレーではなく、
しっかり助走して全力でスパイクを打つという、
誰もが達成可能な〝あたりまえ〟のプレーなのです。
ファースト・テンポと〝はやい攻撃〟は
全く別のコンセプトのアタック戦術である
という真実を、実感頂けたでしょうか?
(③へつづく)
(2012年)
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