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2020年4月4日土曜日

ポーランドへ行ってみた④

2020年2月のポーランド訪問記③

 今回の滞在の仕上げはポーランドのプロリーグ、プルス・リーガの試合観戦。
 スケジュールの関係で滞在先のワルシャワでの試合はなく、この日は首都ワルシャワからバスで2時間弱走ったところにある、地方都市ラドムでの試合。ホームとなるラドムの対戦相手にリーグ首位でアナスタシ監督率いるワルシャワの対戦でした。

 自分なりの滞在のストーリーは、アンダーカテゴリのチームの練習→U18強化の現場の練習→そしてシニアのトップチームの試合・・・という流れで見学することができる中で、何か系統性や取組の方向性を見出せたらと思っていました。
 ポーランドでは、サッカー、バレーボール、スキージャンプの3つが国民的人気スポーツだとか。その中でやはりサッカーの人気が強く、国内の大きい都市にサッカークラブのホーム、バレーボールクラブはサッカーに比べ地方にある比較的小中規模の都市をホームにしてある種の共存を図っているとか。実際、今回行けたラドムという都市も、かつて州の統合以前は州都で栄えていたそうですが、現在は州統合の影響もあり少しさみしい地方都市となっていました。アリーナも日本の小さな町村でも珍しくない普通の体育館でした。ですが、試合は地元ファンを含め、ほぼ満員状態。熱気あふれるサポーターの応援がありました。



(ヨーロッパの街並みを味わいながら少し散策)

さて、試合観戦。やはり老若男女、幅広い年齢層の人々が試合観戦をしていました。
小さなアリーナとはいえ、地方都市での試合でこれくらいお客さんが入るというのは、日本国内のリーグでもそうそうないんじゃないかなと思います。人々は、オラが地元のチームの応援を楽しみにしている空気を感じます。


この日の試合は、①25-19、➁22-25、③25-21、④25-23でセットカウント3-1で、ホームのラドムが勝利。しかも、もつれた展開が多い接戦の中、アウェーのワルシャワの方がリードすることが多い中、ホームチームのラドムが我慢の展開の中から、粘っての逆転勝利。ホームのお客さんも大喜びで、私も近くのおじさんやおばさんとハイタッチやハグを求められちゃいました。
ここでの応援の熱気はなかなか日本では味わえない空気。日本もこうなってほしいなと願うばかりです。


 注目していたゲーム内容ですが、戦い方でいうと、オリジナリティーの対決というかチーム独自の戦術対別の戦術というよりも、双方とも戦い方はどっぷり四つ。というのもブロックシステムも、攻撃のオプションも両チームともむしろ標準化されたものを駆使して、それをいかに組み合わせ発揮させるかの戦いに見えました。
 そして、育成年代の練習で見てきたようなものの延長上、完成形とも言えるようなもので試合が戦われていました。おそらくトップから系統的にアンダーカテゴリに育成や強化策が下ろされているのではないかと推察されます。


 日本では、何とか先生の何とか理論とか、何とか高校何とか大学の何だかシステムと揶揄されることが多いですが、ポーランドに来て見た限りにおいては、そんな極端なゲームやプレーのスタイルはみられないように思います。もちろんここで見られたゲームの内容や駆使されているスタイルは、国際大会でも見られる、今の世界で取り入れられているものを自然に行っている印象です。
 今回は、時間に余裕がなく、短期の滞在でしたが、日本との比較において海外の試合、練習や育成の現場を観ることは大変有意義な財産となります。


(2020年)

2020年3月22日日曜日

ポーランドへ行ってみた③

2020年2月のポーランド訪問記③

 前日は、首都ワルシャワで活動する、U18のクラブチーム様子を見学し、いわゆるアンダーカテゴリー、育成年代の練習やコーチングの一端を観ることができました。

 ポーランドのバレーボールに関して、予てから私が関心を寄せていたことは、国際的な中での強化の成功と、日本との対比についてです。
ポーランドと日本は、男子バレーにおいて、1970年代に世界のトップを走っていました。ところが1980年代以降、旧ソ連の他に、アメリカやキューバが躍進し、その後イタリアに続いてオランダやユーゴスラビアなどのヨーロッパ勢が台頭します。2000年代はみなさんご存知の通り、ブラジル代表によって現代のバレーボールシステムが確立され世界を牽引してきました。
 ポーランド男子は、そのような情勢の中で2010年前後から世界のトップに返り咲いてきました。
 残念ながらその間、1970年代にはポーランドとともに世界の頂点を争い頂点に立った日本は現在もなお世界に溝を開けられています。ここにはどのような違いがあるのか?そして私の仮説は、特にアンダーカテゴリ、育成年代といわれるような青少年への普及や育成のシステムに、ポーランドと日本に違いあることをこの目で見たかったわけです。

(スパワにあるオリンピックセンターのバレーコート)

ポーランドバレーボールのトレーニングと開発のシステムは、その基礎・土台ともなっているる「スクールバレーボールセンター(SOS)プログラム」と、ポーランドバレーボール連盟が運営するバレーボール専門の「スポーツマスタリースクール」によって支えられているようです。

「SOSプログラム」におけるトレーニングは、地元のクラブで若者をトレーニングするコーチによって運営される、小学校のスポーツクラスに基づいているようです。

 
(「SOSプログラム」に関する資料)

「スポーツマスタリースクール」というのは、いわゆる高校生にあたる年代の、国内からセレクションされた選手が集まり、寮生活をともなった学校生活をしてバレーボールのより専門的な指導を受けるものです。男子はワルシャワの南西にあるスパワで、女子はクラクフの南西にあるシュチルクにある、ナショナルオリンピックセンターで専門スタッフの指導を受けています。そして彼らは、ポーランドリーグの2部に参戦をしています。その中からプロクラブやナショナルチームへの道にもつながります。



 ここに来ると、ポーランドの男子バレーボールの歴史が凝縮されています。多くの選手たちがこの地でトレーニングをしコーチングを受けてきているのがわかります。ここからも、長期的な展望にたって、計画的に選手を育成し、組織的なコーチングをしていることがうかがえます。


 この日の練習は、リーグ戦前日の調整のためのものだったようです。
  ・体力トレーニングをともなったウォーミングアップ
  ・シングルハンド限定のミニゲーム
  ・2対2のフロントコートでのミニゲーム
  ・6対6による、レセプションからのゲーム練習


 ポーランド国内からセレクションされた生徒たちだけあって、メンバーはすべて長身選手。フィジカルもしっかりトレーニングを受けていることがうかがえます。
 バレーボールスキルは、日本の高校生と比較してそれほど驚くようなスキルの高さが顕著というわけではないものの、全員がしっかり基本スキルを身につけています。日本でしばしば見受けられる、長身なのに動きが散漫で守備ができないなどといったことはあまりないようです。


 注目したことが、ゲームにおけるプレースタイルみたいなものに、系統性を感じたということです。前日見てきたクラブチームでやっていたこととも共通性があり、その後見てきたプロチームのプレーにもつながっているようです。これらは、単なるトレンドや指導者の思い付きでやっていることではない、系統的な取組を感じます。実際前日のクラブチームでのプレーよりも、スパワのセレクションチームの方が完成度も高さパワーにも磨きがかかっていました。
・シー アンド リアクト をベースにした組織的なブロック
・センターからのバックアタックが組み込まれいる
・センターからのバックアタックは、アプローチや打つ位置にバリエーションがある
・いわゆるBクイック的なセッターから距離のあるファーストテンポが軸
・オポジットのライトからのバックアタック

このあたりは、意図的なコーチングがされているように思いました。

 練習の最後に、ヘッドコーチから質問をたずねられ、恥ずかしいことに質問に困ってしまい、慌てて「選手の思考力」についてたずねてみました。そうすると、「何を今さら当然だろ!」みたいな返答されてしまいました。
 ゲームにおいて、選手が主体的に自ら考えをもってプレーをすることは当然のことであり、それをここでは教えることではない、というような返答でした。
 むしろ、高度な展開とやろうとする戦術を各々が理解し、その達成のために、場面で瞬時に最適な判断とパフォーマンスの発揮を行うこと、そのための果敢なチャレンジやトライから逃げないこと・・・そういったあたりへの要求があったように思います。
 コーチは、静かに見守ることが多い中、消極的なプレーや原則に反するプレーには即座に強い言葉がけをしていることもあります。それは感情的に怒るといったものではなく、しかしそれでもかなり緊迫感のある場面もあったりしました。
 こういったあたりも、日本での話題や議論がまだまだ未成熟なところもあるように思います。


 お邪魔したスパワのオリンピックセンターは、ワルシャワから車(高速道路)で1時間ちょっとの小さな町の中にあり、スパワの帰りからワルシャワに入った郊外にある、ポーランド連盟のオフィスに幸運なことにお邪魔することができました。


 今回お世話になった連盟のスタッフの方とお話していると、とにかく「ポーランドはまだまだ」、「ポーランドはこのままではいけない」といった言葉がよく聞かれ、現状に満足してはいけないという気概を感じます。
 ポーランドリーグの活性化や国際大会の開催などを通して、ポーランドは成長を遂げつつ、ここ10年間は育成プログラムの整備にも着手しました。2000年代当初活躍した選手たちの多くが指導者となり活躍しているようです。また、データーソフトの自国開発にも挑戦しています。また、海外との交流も大事にしており、そこでの情報交換やノウハウの交流も成功の一因につながっているようです。
 特にヨーロッパでは、各国・各地で、コーチたちのクリニックやレクチャーなどが多く開かれているようで、それらを通した交流や切磋琢磨も成長の大きな要因になっているようです。

 ポーランド連盟のオフィスに入って驚いた光景に出くわしました。オフィス内のドアに何やら、漢字の張り紙があったのです。そこには「改善」と書かれていました。


 これは、なんと、ポーランド代表監督のヘイネンが、ポーランドでものすごく強調している言葉なのだそうです。この「改善」という言葉は、世界の中で自動車生産のリードする日本の企業理念、組織理念の考え方が、世界中に広まっているなかで、ヘイネンも大事にしている言葉なのだそうです。
 最後には、ポーランドバレーボールの会長室にも入れてもらい、会長と面会もできました。会長室には、東京オリンピック出場権を得た試合後の際に使われた、ダルマが飾られていました。


 日本のバレーボールが、ポーランドをはじめ、他国から謙虚に学ぶべきことはたくさんありそうです。(連盟のHPでしょうかいしてもらえました)



(2020年)

2020年3月8日日曜日

ポーランドに行ってみた➁


2020年2月のポーランド訪問記➁
とにかく観光よりもバレーボールを観たくて。
しかも、プロ選手よりも、育成の実際を知りたくて。
この日は、ポーランドの首都ワルシャワにある、U18に相当するクラブチーム2つを紹介してもらい、午前・午後に分けて練習を見学してきました。いずれも翌日に大きな大会があるということで、調整練習でしたが、いい刺激をもらえた気がします。

この日の午前は、
KS METRO WARSZAWA というクラブチーム。
比較的最近できたチームらしいですが、現在はこのカテゴリではトップの位置にある強さをもっているようです。

・ボールなしでの体力トレーニング
・ボールを用いたウォーミングアップ
・サーブとレセプション
・レセプションからの攻撃パターンプラクティス
・ゲーム練習(テストマッチ)

といった内容で2時間程度、という内容でした。


特に重点を置いていたように見えたのは、
・ブロック練習
・レセプションからの攻撃パターン
 →セッターから距離のある1stテンポ+レフト+ライトのバックアタック
・3~4人でセッターを回している
というあたりでした。


この日の午後は、
MOS WOLA WARSZAWA というクラブチーム。
こちらは歴史が長いようで、
長年ポーランドのスポーツ、特にバレーボールの選手育成に貢献してきたクラブのようです。多くの代表クラスの選手やコーチも輩出しているようです。


練習の見学の前には、クラブの責任者の方から熱心な説明を受けました。
ポーランドでは、学校単位でやっているバレーボールプログラムがあるようで、日本で言う部活みたいな感じなんでしょうが、それが競技システムの中心ではないようです。
それとは別に、クラブチームがあり、そのクラブチームの中にも、バレーボールに重点を置いた「センター」的な役割をするチームがあるようです。


今回の訪問時期は、ちょうど学校が冬休みに入るのと重なったため、あまり通常のアクティビティを見学できませんでしたが、それでも午後の前半はU18の女子が数名参加し、個人練習をしていました。コーチとの関係もフレンドリーで、楽しく練習を開始するも、後半はスパイクのスイング動作やブロックのステップ練習など、個人練習に特化したクローズドスキルの練習がメインでした。


午後の後半は、U18の男子チームの練習。
こちらは午前のクラブチーム同様の大会直前の調整のためのチームのようで、たくさんの選手が集まって練習をしていました。
 ・ウォーミングアップ
 ・サーブ練習
 ・スパイク練習
 ・レセプションからの攻撃パターンプラティクス
 ・ゲーム練習(テストマッチ)
といった内容でした。

この日の午前と午後で見学できたクラブチームは、ポーランドの中でも強豪チームみたいでしたので、集まって構成している選手たちは、みんな高身長なメンバーでした。
また、セッターは複数人練習しており、ゲームにおけるバックアタックは当たり前のように組み入れています。特にセンターからと、オポジットによるライトからのバックアタックは標準的に行っている印象を受けました。


日本との比較において、
教育システムも違うし文化も違う。スポーツやバレーボールの環境や組織運営も違うので、アンダーカテゴリーやU18などのバレーボールについて、日本とポーランドを比較し、一概に優劣をジャッジはできないかもしれません。
しかし、トップカテゴリからアンダーカテゴリまでの系統性や連携が感じられます。
短時間のお話の中だけでの情報でも、スポーツクラブ、学校スポーツ、それらの中核となるセンタークラブ・・・U18の年代に用意されているバレーボールの場には、それぞれの担う役割とすみ分けがなされているようです。
日本で言う小学生年代U12までは、2人制によるミニバレーをやらせているそうで、6人制でのゲームはやらさていないようです。その代わり2人制のミニバレーは、全国大会もあるそうです。
日本で言う中学生年代になってからは6人制バレーボールへの移行していくみたいで、日本みたいに地区予選や全国大会、選抜大会みたいなものもあるそうです。
ただ、「部活」が競技の主要を占める日本のバレーボールの制度とは違うので、この日の取材だけでは、ポーランドの育成年代の取組の全体像は把握しきれませんでした。
ですが、ポーランドでもいわゆる「勝利至上主義」の弊害や、「保護者のヒートアップ」、「指導者の暴走」は、念頭にあるらしく、それらへの手当ても組織としてのプログラムとして構想に組み込まれているようです。

(続く)



(2020年)

2020年2月23日日曜日

ポーランドに行ってみた①

2020年2月。
わずかな日程ではありましたが、ポーランドに行く機会がありました。
その数か月前にバレーボールを介して知り合った知人から、年明け新年早々に連絡があり、ポーランドに行くから一緒にどうか?とのお誘いを受け、時間もお金もなく迷った末、こんな機会も滅多にないだろうと、勢いで行くことを決断。しかし、海外に行くことに慣れていることもあろうはずがなく、不安だらけの旅となりました。


 私がずっと抱いていた夢の1つに、バレーボールを学ぶことを目的に旅をするということがありました。これまで、日本国内はそれなりにバレーボールのおかげで旅をさせてもらえたので、いつかは異国の地を訪ねてみたい・・・。しかし自分のキャリアには実績も地位もコネクションもないので、あきらめみたいなものもあったのは事実で、自分みたいなのが海外だの、外国だの言うのは・・・という引け目もあったのですが、そんなことははかったです。行ってよかったです。



(ポーランド・アソシエーションのオフィス外観)

(ポーランド・アソシエーションのロビー)

 ポーランドは、今バレーボールの強豪国として注目されており、古くは1970年代に、当時の日本と並んで世界の男子バレーのトップにあり、2010年代になってから再び世界のトップに立ちだしています。個人的には、男子バレーでは日本と同じような歩み・・・つまりは70年代に一度栄光をつかんで以来、約30年以上は他国の背中を追う中、ポーランドは日本を尻目に世界のトップに返り咲いたことに関心がありました。そしてその要因には、外からは見えない強化や育成の仕組みがあるのではないかと考えていました。
 今回の旅は、日本人の知人以外に、ポーランド・アソシエーションのスタッフの方にも現地コーディネートで多大な協力を得て、育成年代からトップカテゴリの様子までを見ることができました。


(ポーランドのプロリーグ「Plus・Liga」の試合 ラドムVSワルシャワ)

 観光はほとんど設定せず、隙間の時間で、宿泊していたワルシャワを散策。旧市街を観たり、おいしいグルメや買い物ができました。ポーランドの食事は、日本人にはとても合うんじゃないかと思います。どれも美味しかったです。










それでは、ポーランドのバレーボール視察記の詳細は、また別の記事にてご報告します。


(2020年)

2019年12月31日火曜日

「育成」とは何かを問いかけ(2019年をしめくくる)

 2019年が終わります。みなさんにとってどのような1年となったでしょうか?
私もとある方から「どのような1年でしたか?」と問いかけられた時、「バレーボールでは・・・」と正直言葉がつまってしまいました。お恥ずかしい限り、その時は周囲に自慢できる成果などないなと考えてしまいた。
 でも、バレーボール以外での仕事では自分はたくさんのチャレンジや成果があって充実していたし、バレーボールでも決して周囲からは見てもらえない小さな学びや自信となった経験もあったし、人との出会いもありました。
 そんなことを、言ったら「それが大事。小さな幸せを誇れることが一番」と言われました。さて、みなさんの2019年はいかがでしたでしょうか?
2019年のバレーボールでは、個人的には
 ① 日本代表男子チームの活躍と希望ある展望
 ➁ Vリーグの各カテゴリの盛り上がり
 ③ バレーボールファンの多様なつながりや交流
 ④ メディアが発信するバレーボール情報の進化
などが、これまでにない変化がみられたような気がします。

私は、このブログでも平成が終わり令和という新しい時代を迎えるにあたり、日本のバレーボールでももう一度「育成」を見つめなおそうというのが、今年のスタートにあたってのテーマでした。しかし、残念ながら、①~④で取り上げたような材料に比べると、あまり大きな変容を感じられなかったというのが正直な感想です。

 新年2020年はオリンピック・イヤー。しかも私たちの国日本で開催されます。来年の東京五輪での成果も大事ですが、それ以上に五輪後どのように発展させていくかの方が重要だとも言われていますし、海外ではもうそこに着手している国もあるようです。そこでバレーボールを考えるブログとして2019年の締めくくりは、「育成」をもう一度みなさんと考えてみたいわけです。



「育成」を考えるうえで、

「バレーボールでみんながハッピーになる」

というのが大事だと思うわけです。
する・みる・支える・・・大人も子供もどの地域やカテゴリも・・・
みんながバレーボールでハッピーな気持ちになれるかどうか。
それが「育成」の成否の根本として重要なのではないかと思った1年でした。

勝利や成功で得られる喜びや幸せがある。
タイトルやステージアップで得られる喜びや幸せがある。
人との出会いの喜びがある。
新しいことを知った学んだ喜びがある。
いろいろあろうかと思います。
でも、そのような喜びは幸せは、「すべての人」にもたらされなければならないと思います。
 高みを極めた一部の人々だけが幸せになり、それ以外の人々は幸福な気持ちになれないようではいけないと思うわけです。でも勝ち負けはスポーツや競技をやる以上は生じてくるわけですから、「すべての人がハッピーになる」というのは、別のコンセプトや価値観が必要になるんだと思います。
 よく指導現場では、対戦相手を敵と呼んだり、目標設定を相手を倒すなどという表現をするのをみかけます。そんなコンセプトでは「バレーボールですべての人が幸せになる」という状態はいつまでも達成できないんだと思います。
 ファンの間では、戦術、選手個人の為人、国内・海外・・・など、人々の志向の違いが話題になることもあり、時には意見が対立することも見受けられてきました。
 対立というのはゼロにはできませんが、それでも共存やコラボレーション、相互理解などで、すべての人がハッピーになる余地というのは、まだまだたくさんあると思うわけです。



バレーボールにおける「育成」に話を戻します。

「育成」という言葉が使われる場合にもそのニュアンスや定義には様々な違いあると思っています。例えば代表チームや国内リーグなどにおける選手の「育成」は、ある程度セレクトされたスキルや経験のある一定レベル以上の人々を対象としています。私はこれは、「強化的育成」と呼ぶか、育成とは呼ばない方がいいのではないかと考えます。

 私がここで言うところの「育成」とは、子どもたち・・・つまりは学齢期(高校生くらいまで)をターゲットとして、しかも「彼らのすべて」を指す概念として考えています。
 先ほど申し上げた通り、2019年の日本のバレーボールでは「育成」の議論やイノベーションは不十分だったと感じています。率直に言えばあまり変容や進歩は感じられませんでした。

「楽しむ」・「尊重」・「探究」

この辺りが、バレーボールにおける「育成」の取りかかりとなる要素になってくると思います。そこに「すべての子どもたち」を掛け合わせていきますと・・・。やるべきことや取り組む余地は膨大なものになるのではないでしょうか?
 
 日本では、これからの教育の大きなテーマの中に、「主体的・対話的で深い学び」というものが掲げられています。
 このテーマは、実は日本のバレーボールの指導現場にも通じる課題なのではないかと思います。
 「主体的」、「対話」、「深い学び」・・・どの言葉もその解釈や理解は一言では説明しきれないものだとは思います。
 子どもたちの「主体性」はどうやって生まれてくるのか?
 一見、自立し統率されているようなチームでも、その根元は指導者や保護者の意向や思惑によって仕向けられていることが多く、それは「やっている」より、「やらされている」側面が強いわけです。一生懸命やっているようで、実は一生懸命やらされているわけです。これでは主体性があるとは言い難いわけです。
 子どもたちにとっての「対話」とは何か?
 対話には、「他者との対話」と「自己との対話」があります。
 他者との対話では、相手への敬意や相手から吸収しようという姿勢が重要です。いくら礼儀正しくとも、相手の考えを理解できない思考力の浅さや、建設的なディスカッション能力ができなければ、他者との対話は成立しません。
 「対話」で見落としがちになりやすいのが「自己との対話」だと思っています。自分のことを振り返って、思考や感情を整えたり、自分へフィードバックをして学習を促進させたりなど、試行錯誤や工夫という作業を成立させるためには不可欠な要素です。
 「深い学び」とは何をもって達成されるのか?
 それは新しい気づきや発見はもちろん、仮に新しい成果や知見がもてなくても、自分自身で仮説や検証をし、一定の方向性を見出す「プロセスを経験する」ことで学びを深めることになるんだろうと思います。

「育成」において、
「すべての人々(子どもたち)がハッピーになる」
ことを実現させる。
試合で勝った者たちだけが幸福感を得て、そうでない者たちは幸せになれない。
選ばれた者だけが幸せになり、選ばれない者たちはハッピーになれない。
キャリアやステータスを得たものが幸せで、そうでない者は不遇を味わう。
これが根深い日本のバレーボール界の育成における課題なんだと思っています。

「楽しむ」・「尊重」・「探究」

ここに、「主体的」・「対話」・「深い学び」が結びつくと思います。

同じことをやっていても、夢中でどんどんチャレンジし続ける人もいれば、必死に苦しみながらやらされている人もいる。
自分の中に起こるイノベーションを求め、貪欲に吸収しようとスクラップ&ビルドを重ね試行錯誤の中から最適解を探る人もいれば、絶対解を信じ他の可能性を排除しながら突き進む人もいる。
(成長欲求という)自分のためにチャレンジし続ける人もいれば、自分の承認的存在意義を守るため他者を標的にしてマウントをしてくる人もいる。

でも、普遍的なのは、他人の幸福を誰かが奪うことがあってはならないことです。そして人のチャンスや可能性を潰していいということにはならないということです。
 今一度、日本のバレーボールにおける「育成」をみなさんと考え、イノベーションを起こしたいというのが夢です。
 すべての子どもたちが、大きな夢や目標に向かって、生き生きとバレーボールを生活の一部にすることができる。そこに線引きも選別もなく共有されるべき、コンセプトやビジョン、フィロソフィーやバリューがあるはずです。



 お恥ずかしい話、私は、友人とボーリングやカラオケ、ゲームセンターに行くのが昔から好きじゃありませんでした。なぜなら、「下手な自分」に対するコンプレックスが強く、楽しめなかったからです。でも、周囲はそんな上手下手に関係なくみんな「楽しむ」ことを目的としていますよね。

 バレーボールのプレーや結果というのは、因果関係が複雑に絡み合って形成されます。そしてミスが起こって当たり前のスポーツ。プレー中はミスをしたあとに、いかにして素早く次のプレーの意識を切り替えるかが重要。そのあとで、なぜミスをしたか、どうすれば同じミスを繰り返さないかを振り返り考えることを怠らないことで、次へのモチベーションへとつなげます。これはバレーボールに限らず、どのスポーツに限らず、人間生活の作業として必要な営みですよね。

 (大人への)お茶出しやあいさつで気が利く選手は試合中のプレーにも生きると言われて指導(教育)されていることも多い(自分もやらせていた時代がある)ですが、そもそもバレーボールというゲームの中の「気づき」を生み出すためには、バレーボールの中の情報や知識がないと気づきにならないわけです。だから、バレーボールの試行錯誤や主体的な工夫をしないまま、他の生活場面での気づきばかりを求めても、バレーボール選手としてのレベルアップには限界がくる。

 すべての子どもたちが、またはすべての大人たちが、
「バレーボールと出会ってよかった」、「バレーボールをやってよかった」
 そうなるために、
 それぞれの「今」やっているプロセスが「夢中」で「楽しい」状態であること。自分が考えていることを表現しても非難されて評価を下げられず自分の立場が脅かされない心理的安全があること。いいものをつくりあげていくために、膨大な時間をかけて試行錯誤を確保でき失敗が許される安心してチャレンジできること。
 こういったことを、バレーボールを通して経験していくことで、ある者はアスリートとして、ある者はコーチやティーチャーとして、ある者はマネジメントやビジネスとして、ある者は親として・・・とにかくあらゆる社会や人生のステージで、生かされていく。これが、「すべての人々がハッピーになる」ということに通ずるんだと思います。

 何かの試練を乗り越え生き残った者たち、勝ち続け成功のレールだけを進んできた者たち、過去のキャリアやステータスを得た者たち・・・一部の人間だけのための幸福だけではなく、「すべての人々・すべての子どもたちに」にバレーボールは何ができるか?
 これが「育成」だと思います。

 いよいよ来年は東京五輪があります。日本代表男女の活躍はもちろん、私たちが住む国で、世界のバレーボールの「ガチ勝負」を観ることができることへの期待感をもちながら、同時に日本のバレーボールのさらなる発展やイノベーションの元年となる1年になればいいなと願います。

 みなさん、今年も1年間お付き合いいただきありがとうございました。よいお年をお迎えください。

Thank you very much for your personal relationship that you extended to me throughout 2020.


(2019年)